〜日々日常。それは流るる空模様。
          人生晴れたり曇ったり。〜
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前にも向き方が。
松ヤニ


田口トモロヲは続く。


先日のタケのバイオリン発表会は、幼稚園からのお友達きくちゃん親子が
きれいな花束を持って雨の中をわざわざ見に来てくれた。

実家の母も、熊本からその日の朝の便で駆けつけてくれた。

ありがたい。

例年ならば、心のどこかで「申し訳ない」と思ったかもしれないが、今年は違った。
なにせ練習量が違う。

毎日練習を積む、というのはこんなにも自信に繋がるものなのだ。
そばで見守るしかない私にさえ、大丈夫という気持ちをくれる。

舞台そでで燃えている息子を見て、今までにないその佇まいに感慨を深くする。


練習は早朝から一ヶ月間、毎日だった。5時半にはタケの目覚ましが鳴る。
眠い目をこすりながら、ケースを開ける。
3月とはいえ朝はまだ寒い。手は凍える。

ときに、朝まで仕事をやっていたうちのひとがその傍らでタクトを振った。

練習、練習、練習。

間違っても、間違っても、間違っても。

とにかく弾き続ける。

弾きこもり、という言葉があったなら、それはこのことではなかったか。
(・・・学校にはそれからちゃんと行ってました)

*******************************

ある日、練習中の部屋から

「ドォンッドンドンッ!!」

という凄い音が聞こえてきた。なにをしているのか。
耳を澄まして2階から様子を伺う。


タケが、どうしても手がついていかない16符音符に、
くやしさのあまり床にむかって地団駄をふんでいたのだ。



ドォンッドンドンッ!!




ドォンッドンドンッ!!







ある日、それは発表会まであと3日、という追い込みの日。




ガィーーーン




「あっ・・・・」





タケが松ヤニを落として割った。







粉々に砕けた、松ヤニ。








「・・・・この、砕けた中でも

一番でかいところをつかおう。」





タケは割れた松ヤニなんかにかまってるヒマはない、といわんばかりに練習に戻っていった。






・・・ああ。そうなのだ。
私は目が覚める思いだった。


世の中複雑化して、頭の中がネガティブ化せざる終えない昨今、

この、淡々と現実を受け止め迷いのない対処をする小学生の、この力こそ、ひつよー不可欠ではないか。



「もうすぐ発表会だっちゅーに!

なんてゲンが悪いんだ!

俺はもぅだみだー!!」





普通の大人はこう考えてしまいがちではないか。

私には、思い当たるフシがいくらでもある。

こういう、今思えば
”たまたま”
の事象を、さも運命の序曲が鳴りだしたかのように
考えてしまうときが。


バイオリニストにはなくてはならない必帯品である松ヤニが
あろうことか追い込み中に粉々に割れる。
ネガティブな主人公はそれを見て恐れおののき、迫り来る運命にやがて弄ばれる・・・・・



実際、こういうことは、ない。

重ねて言う。ない。




私はこの目でみたのだ。

その砕けたヤニの中から、本当に一番デカイところを選び
何食わぬ顔で弓に塗りたくっている男を。

そして、発表会は成功した。
それは「これまでで一番の出来!」と先生から褒めちぎられるほどの出来。

毎日の地道な積み重ねは、タケに少々のことでは決して揺らがない自信と
モチベーションを与えたのだ。




負けそうになったら、

地団駄を踏む。

それでも負けたら、

くやしいと涙を流す。


でもそのままじゃ終われないじゃないか。


だから、


悩み抜く勇気はあるか。


逃げずにやれるか。



もう一度自分に問う。


前を向くのはそれからだ。


この強い決意無しではまた同じことを繰り返す。



ただ、闇雲に前を向いて歩くだけが脳ではない。

00:38 バイオリン comments(0)
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