〜日々日常。それは流るる空模様。
          人生晴れたり曇ったり。〜
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ツアー報告その7。〜島のオジィ〜
海ざる


「目が〜、目が〜〜!!」

水面移動をしながら私ひげは、ムスカのようになっていた。

ライセンス講習の時、ひげは師匠に必死に訴えたことを思い出す。

一目見て「この人ダメそう。」と思われた生徒ひげは講習前講習ともいうべき特別授業を受けた。それは石垣島底地ビーチの波打ち際でのこと。


「じゃあ、とりあえずマスククリアやってみましょう。」

「まず、水をちょびっと入れます。」
「ハイ。」(素直にちょびっと入れる)
「ああ〜・・もうちょっと入れましょうか。」
「・・ハ、ハイ。」(もうちょびっと入れる)
「・・・もうちょっと。」
「え。」
「半分くらい。」
「ええっ!」

・・・よくもまぁ師匠は、こんな私をダイバーにして下さったものだ。
今更ながら、本当に感謝だ。

「じゃあ、次は全部入れてみましょう。」
「もう、ぜったいムリです」
「ムリといってもやんないと、次に進めませんから。」

もう、はっきり言ってこの時点で「もう帰ろう」と思っていた。
波打ち際でこれなんだもん、海に出たらいったいどうなる。
もうここいらで手を打って早々に・・

「ハイ、出来ますよ。大丈夫〜〜」

師匠が大丈夫と言っている。
本当なのか。

飼い主に馴れ切っていない猫のような態度で恐る恐る水を入れた。

「ギャボーッ!!」
本当に満タンに水を入れてしまった。
初心者のタガをはずすとこれだ。加減を知らないのだ。

必死に出す。水を出す。コンタクト装着中のため、目つぶって全部手探り。

「で、出ました!私ってスゴ・・・」

そのときマスクの中で見開いた目に激痛が。

「い、痛っーーい!?何コレッ??」
騒ぐひげに師匠は言った。


「・・・・そりゃあ、海水ですから・・・・」


波打ち際の攻防から「目からウロコ」の連続だったのだ。



*************************************


「うわぁぁ〜〜ん!ごめんよ〜〜っ」


「ど〜したんですかぁ?だいじょうぶ??」

エクジットしてきたかよちゃんとじゅんじゅんが心配そうに聞いてくれた。

せっかくの慶良間ラストダイブだったのに・・・申し訳ない・・・。

クスン。
ダイバーが上がってくるあのバタバタした船の上で寂しい気持ちになっている、ひげである。おまけに海水で目はシパシパ。

そんなときだった。

「人生、そんなこともあるさ〜」

ふいに上の方から声がした。

あらぬところにポコンと浮いたひげを、まるでGPSで追跡していたかのようにスクランブル発進で拾いにきてくれた船長セイシュンさんはもう船を係留して撤収の手伝いをしてくれていた。

「そんなこともあるさ〜」

BCを脱がせてもらいながら、セイシュンさんの少ないけどやさしい言葉が解放されて軽くなった体にじんわり染みて、心も少しずつ軽くなっていくようだった。

見上げたセイシュンさんの顔は逆光でますます真っ黒だ。
でもニコニコしているのがよくわかる。

それは、真っ白い歯がやっぱりキラリと光ったから・・・。


そうだ。人生こんなこともあんなこともあるのだな。
それが無人島に取り残されることや、急な流れにマスクの中が洪水をおこすことだったとしても。本当はフィンも片方抜けました。・・・やはり思い出すとキリが無い。こんな経験は一度でいい。



「ぎゃ〜!ひげさんが正解だった〜!!帽子持ってくるべき〜〜っ」
かよちゃんがしまったぁと叫ぶ。
「私も・・髪結んでて見えてた地肌がヒリヒリ〜・・・」
じゅんじゅんも。

すでにいつもの空気がそこにはあって、2人はそう言ってケラケラ笑っていた。

慶良間のてぃだに照らされ続けたてんこちょが、そろそろヒリヒリ感を増してくる頃だ。


「さぁ、いこうかね〜。」

セイシュンさんの船は男岩をあとにして徐々にスピードをあげた。

点在する岩や島影を見やりながら、トランスを呼ぶいつものエンジン音に包まれる。


その轟音を聞きながら私たちダイバーは、しばし放心にひたるのだ。
01:50 ダイビング comments(0)
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